Happy Birthday Japan

2月9日、本田菊の元に一通のメールが届いた。そのメールは友人のアーサー・カークランドからのものだった。
「菊へ 
2月11日にお前の家に行ってもいいか? 
アーサー・カークランド」
「・・・アーサーさん?」
菊の諸友人は連絡をせずにやってくるのだがそれはアーサーも同様のことであった。菊はそんなメールを不思議に思いながらもとりあえず返事のメールを送ることにした。
「アーサーさんへ 
  11日、是非来てください 待っています
                  本田菊より」
菊は2月11日という日の意味を忘れていたため、特に気にも留めなかったがその日は建国記念の日であり菊の誕生日だったのだ。

その少し前の事だ、アーサー邸ではアーサーが重く悩んでいた。
「送ろうかな・・・ やっぱ送らないかな・・・ 明日でも遅くないよな・・・」
アーサーのPCのメール画面には先の文面が打ち込まれていた。
「そんなこと言いながらもう一週間が経っているわよ」
「送るんならさっさと送りなさいよ」
アーサーがこの文面をPCに打ち込んだのは一週間ほど前、しかも文面だけに半日考え込んでいたのだ。
「わかってるよ お前たちは黙ってやがれ」
妖精たちはそんなアーサーをずっと見ているため、まどろっこしくて仕方がないのだ。
「アーサー・・・ いつまでもそんな感じだとあたしたちの気が滅入るわ」
「いつまでもそんな事やってるからいけないのよ、そんなアーサーにはこうしてやるわ!」
妖精の一人がマウスを操って送信ボタンを押した。アーサーはぎょっとして妖精をにらんだ。
「なんてことするんだ ばかぁ!! ふざけんじゃねえよ!」
「どうせ送るんなら早いほうがいいでしょ 私たちも我慢の限界よ」
妖精たちにも負担がかかっていたと知るとアーサーも少しは気を落ち着かせられた。
「ああ ついに送っちゃたな・・・ 大丈夫か? 他の奴に間違って送られてないかな・・・?」
「大丈夫よ、アーサー 30回も確認したじゃないの」
「そうよ 心配する事はないわ、返事を期待するのよ」
PCのメール画面を不安そうに見つめるアーサーを妖精たちが元気付けていた。

菊は相も変わらず2月11日の意味には気づいていなく、バレンタインが近いということもあってゲームの攻略を勤しんでいた。
「ここの攻略には○○で・・・ こっちは△△ですかね・・・」
リアルタイムで進むネットゲームでは前日までの好感度が重要なため、バレンタイン前夜まで菊はネトゲに更けようと計画立てている。
「そういえば、2月11日って何かありましたっけ・・・?」
菊は自分の記憶の中からその日の記述を思い出そうともしたが、やっぱり思い出せずゲームの進行もあってそのことを考えるのをやめた。

アーサー邸には2月10日から菊へのプレゼントの搬入が行われていた。
「アーサー,真紅の薔薇が届いたわよ」
「最高級紅茶のセットも到着したわ」
妖精たちがアーサーに報告を行っている。アーサーはそれには満足そうにはしながらもどこか物足りないという表情をしながら、考え込んでいた。
「これじゃあどこか物足りないな・・・ やっぱり心をこめた何かを作らなきゃな・・・」
「確かにそうね 何か作ってあげたら? たとえば・・・」
「やっぱりスコーンでも作ってやるか! 菊もうれしがるだろうな~」
場の空気が凍りついた。妖精たちはそっちに話題を向けないようにしようと思っていたがタイミングが悪かったらしい。
「・・・アーサー 料理じゃないものにしない?」
「俺の料理がまずいとでも言うのか?」
「そうじゃなくて、料理はいつもあげているんだからほかの物よ刺繍とか」
「刺繍か・・・ 悪くないな ハンカチぐらいならすぐできるし」
妖精たちもほっとしたように胸を撫で下ろしていた。
「じゃあ、お前達も刺繍糸とかの準備しろよ」
「わかったわ アーサー」
妖精たちはアーサーの指示を聞くとまた散っていった。

そして、いよいよ2月11日、アーサーは胸を高鳴らせながら菊の家に向かっていた。菊はやっぱり思い出すこともなしにでもアーサーの到着を楽しみに待っていた。
『おはようございます 本日は2月11日、建国記念の日で祝日でございます・・・』
何気なくつけていたラジオがそのことを伝えたのにもかかわらず菊はその事には気づいていなかった。
「アーサーさんには何をお出ししましょうかね 羊羹とかカステラがいいかな?」
菊は愛犬のポチにそんなことを尋ねるが答えるはずもない。
アーサーは菊の家の門の前に立った。インターホンを鳴らそうかを考えながら右往左往していた。通行人はそれを不思議そうに見ながら通りすぎていった。
「そろそろ約束の時間だけどどう渡そうか・・・」
そんなことをぶつぶつと言っていると菊が玄関から出てきた。菊はアーサーが来るときは玄関先で待ってくれるからだろう。
「アーサーさん? おはようございます」
アーサーの姿を目にした菊は門を開けてアーサーに入るように促した。
「おっおはよう菊 今日来たのは別に誕生日だからとかじゃないからな!」
「えっ誕生日? 誰のですか?」
菊はまだ、不思議そうに聞き返した。アーサーは拍子抜たような顔をして菊を見返した。
「今日はお前の誕生日じゃねえか 忘れたのか?」
「私の誕生日!? 今日って・・・2月11日ですか!」
アーサーに言われて初めてそのことに気付いた菊はクスリと笑ってアーサーに抱きついた。
「変だとは思ったんですよ アーサーさんがいきなりメールしてくるなんて・・・ そう言う事でしたか」
「俺、ここ一週間ぐらいお前の事ばっかり考えてたのにひどいぞ ばかぁ・・・」
「ごめんなさい 本当に素で忘れていたんですよ」
アーサーが後ろ手に持つものに気付いた菊はアーサーを家の中へと誘導した。

「すいません 全然気づかなかったので何も用意してないんですけど・・・」
「とりあえず・・・ これは俺からの気持ちだ」
アーサーは菊にあげようと用意したものを出した。
「わぁ ありがとうございます さっそく飾らなきゃです。」
菊は紅茶のセットや真紅の薔薇を見ながら感嘆の声を漏らした。
「あと・・・ これは俺が手作りしたものなんだけど・・・」
アーサーはおずおずと刺繍の入ったハンカチを取り出した。
「これは・・・ とてもきれいなハンカチですね」
「そうか! じゃあいっぱい使ってくれよ」
「ええ もちろんですよ」
ハンカチには薔薇の花束の刺繍とアーサーから菊に送る言葉が書かれてた。
『You are the only important thing to me in my life.(あなたは、私の人生で唯一、一番大切な人。)』
                           
                               ~fin~
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